食道がん

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食道がんについて

食道がんは内面をおおっている粘膜から発生し、食道の中央付近に最も多く発生します。
食道の粘膜は扁平上皮でできているので、90%以上が扁平上皮がんです。

がんが大きくなると粘膜を超えてその外側にある粘膜下層、さらに固有筋層へと入り込みもっと大きくなると食道の壁を貫いて食道の外まで拡がっていきます(浸潤)。

食道の周囲には気管・気管支や肺、大動脈、心臓など非常に重要な臓器が近接しているため、食道壁の外にまで拡がるとすぐにこれらの臓器にも入り込んでいきます。リンパ管や血管にがんが浸潤してリンパ液や血液の流れに乗ってリンパ節や肺、肝臓など他の臓器に飛んでいくのが転移です。

粘膜にとどまるものを早期がん、筋層にわずかでも入ったものはすべて進行がんと呼ばれます。従って進行がんと言っても、早期がんに近いものから末期がんにいたるまでさまざまな程度が存在します

日本食道学会編.臨床・病理 食道癌取扱い規約 第12版.2022年,
金原出版.を参考に作成

原因

日本人に多い扁平上皮がんの原因としては飲酒や喫煙、果物野菜摂取不足などによるビタミン不足が知られており、欧米人に多い腺がんの原因としては逆流性食道炎があげられ発生要因として肥満、欧米型の食生活、喫煙などが考えられています。今後、生活習慣の変化から日本でも腺がんが増加する事が予想されます。

症状

他の部位のがんと同様に初期の食道がんにはほとんど自覚症状がありません。がんが進行するにつれて、飲食時の違和感・つかえ感、さらにがんが食道をふさいでしまうと水も通らなくなり吐いてしまうようになります。そうなると体重も減ってきます。周囲にある肺、背骨、大動脈、神経に浸潤すると胸や背中の痛み、咳、声がかすれるなどがあります。

同時または別の時期に複数の臓器に発生したがんを重複がんといいます。食道がんでは、約20%に重複がんが発生するといわれています。食道がんの重複がんとして多いのは、胃がん、頭頸部がん(咽頭がん、喉頭(こうとう)がんなど)、大腸がん、肺がんなどです。

検査

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)は、咽頭、喉頭、食道、胃、十二指腸の粘膜の色や凹凸などを直接観察する検査です。また、異常な部分があれば組織を採取し(生検(せいけん))、顕微鏡でがん細胞の有無を確認してがんを確定します(病理検査)。さらに、がんの位置や広がり、数、深さも確認します。その際には画像に映るがんを際立たせて、広がりや深さを診断しやすくするために特殊な色素を粘膜に散布したり、特殊な波長の光(LCI/BLI)を使用したり、画像を拡大して観察したりすることがあります。

胃カメラ検査時に偶然発見されえるような早期がんであればEMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の対象で、
5年相対生存率はおよそ80%です。

早期発見するには50歳以上で喫煙している(禁煙した)、飲酒する(禁酒した)、飲酒で顔が赤くなるような方や逆流性食道炎、肥満の方は年1回胃カメラ検査をお勧めします。

当クリニックでは専門医による鎮静剤を使用したツラくない検査を実施しております。

食道がんと診断した場合は高度医療機関にご紹介いたします。

治療

1.内視鏡的治療 早期がんが対象

  • EMR (内視鏡的粘膜切除術)
  • ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)

合併症として出血、穿孔があります。

1週間ほどの入院で体に最も負担が少ない治療法です。

2.手術 

がんのできる部位により異なります。

胸部食道がんの場合は一般的に右胸部と頸部と上腹部を切開し、胸部食道全部と胃の一部を切除します。同時に頸部・胸部・腹部にわたるリンパ節郭清が必要です。最近では、胸腔鏡(きょうくうきょう)や腹腔鏡(ふくくうきょう)などを使って傷を小さくする方法もあります。食道の再建は、胃を引き上げて、残っている頸部食道とつなぎます。胃が使えない場合は、大腸や小腸を使います。

合併症には出血、縫合不全、肺炎、嗄声、肝・腎・心などの臓器障害などがあります。

3.放射線治療

がんを治すことを目的にした治療(根治照射)と、がんによる症状を抑えるための治療(緩和照射)の2つがあります。

放射線治療単独で行うよりも、化学療法と同時に行う化学放射線療法のほうがより効果的で、内視鏡的切除が

難しい0期~ⅣA期のがんに対し根治を目指して行われることがあります。おおよそ2〜3か月要します。

放射線治療の副作用
(1)治療中の副作用

照射している部位の痛みやつかえ感が出てきます。また、嗄声(声のかすれ)が起こることもあります。

そのほかにも、皮膚の乾燥や日焼けに似た症状、白血球減少などが起こることがあります。

(2)放射線治療後、数カ月から数年後に起こりうる副作用

肺炎や心外膜炎・心のう水貯留、胸水貯留、甲状腺機能低下などが起こることがあります。

4.化学療法(抗がん剤治療)

化学療法には、根治を目指した集学的治療として行われる化学療法と、切除不能進行・再発食道がんに対して行われる化学療法があります。集学的治療とは、がんの種類や進行度に応じて、手術、放射線治療、化学療法などのさまざまな治療法を組み合わせることです。近年、食道がんでは、手術と化学療法、化学療法と放射線治療を組み合わせた集学的治療が多く行われています。

副作用には、だるさ、吐き気、食欲不振、口内炎、髪や爪が伸びなくなるなどの自分で気付く症状と、白血球の減少、血小板の減少、貧血などの検査で分かる副作用があります。また、白血球が減少することによって感染しやすくなります。